ノーリフティングケアは、介護を受ける方を人間の力で抱え上げずに行うケアのことです。
介護職員の腰痛対策のためにオーストラリアから広まっていったケア技術であり、ケアされる側にもいくつかのメリットが受けられます。その一つがケアされる側の心理的な負担が軽減されることです。人力で抱え上げようとすると、ケアされる側は身構えてしまったり、恐怖を感じたりして全身のこわばりにもつながってしまいます。スタッフに無理をさせているように感じて、申し訳なく思う人もいるようです。そこで、移乗ボードやリフトなどの用具を用いて人力に頼らずにケアすることで、心理的な影響も小さくさせることが可能です。精神的にも落ち着くことができ、体のこわばりも緩んで筋肉や関節の負担が減るのが、ノーリフティングケアの特徴です。
ノーリフティングケアには、ケアされる側の自立を助けるメリットも存在します。車いすの移乗やベッドでの起き上がりの際に、抱きかかえるのではなく用具を用いた介助をすることにより、自分でも身体を動かすことができる実感を得て自立心を向上させる効果が期待できます。活動する意欲も高まっていくでしょう。踏ん張りや屈むなどの用具を使用した動作をするために、リハビリ効果も得られます。また、抱きかかえる際に無理な体勢を取らずに済み、自然な動きで行えるのもメリットです。皮膚が弱い人は抱きかかえの接触によって皮膚が損傷する場合がありますが、ノーリフティングケアなら損傷の予防にもつながります。このノーリフティングケアは、介護の仕事で欠かせないケアの一つとしてさらなる浸透が期待されています。