とあるグループホームでは、身体介護を必要とする方が増えたために業務がひっ迫し、違う施設へ移ってもらうことも検討しましたが、慣れたグループホームで見てほしいという家族の希望もあり話が進みませんでした。

そこでグループホームが取り入れたのは、業務改善の一環で一台のスタンディングリフトの導入です。立ちあがりが大変になった方にスタンディングリフトを使用したところ、日に何度も移動が必要なトイレ介護が時間をかけず行えるようになりました。介護職員の中腰姿勢の保持も短時間で済むために介護負担が軽減され、時間内に日中の介護が終わるようになったのです。認知症状があっても、掴まるところやひざを当てるところに自然と体が動きます。使用中に怖がる様子もなく、使用後の痛みの訴えもありません。

また、あまり広くない浴室内でも使用できるので、今まで狭い脱衣所で汗をかきながら行っていた着脱介助もスムーズになりました。立ち上がりを補助するために体を持ち上げ、立位を保持するために体を支えながらズボンを引きあげる動作を介護職員ひとりで行っていましたが、リフトがあれば立ち上がりと立位保持をリフトが行ってくれるので、安全に注意しながら着脱介助を行うことができます。介護職員の無理な姿勢での着脱介助による入居者の着衣の乱れもなくなりました。スタンディングリフトの導入で抱えないケアを行ったところ、グループホームの既定人員内で介護がスムーズになっただけでなく、入居者の生活の細部に心を配ることもできるようになったそうです。